スタイリッシュにもちかえろう
いい匂いのするアトリエ
谷本康一郎氏「1850年に創業以来、伝統の技と心を引き継ぎながら、日本茶のおいしさを伝え続けています。もちろん166年間続いていると、時代によっていろいろな試行錯誤があります。たとえば、4代目は戦後の日本茶不足を解消するため、ウーロン茶を商業ベースにまで持ち上げ、5代目は一般量販店の卸売ルートを開拓しました。そして次期6代目の私は、つぼ市のコンセプトである“お茶と、人と、人と”を実現するため、茶寮の展開に注力しています。お茶は喉が渇いたときに飲むもの。もちろんそれは正解ですが、大切な人とのティータイムが癒しの時間になるように、コミュニケーションツールとしての役割も果たします。そのため、つぼ市のお茶は飲むとブレイクできたり、幸福感にひたれるブレンドにこだわっています。アミノ酸が豊富なお茶をセレクトしているのも、旨み、香り、苦みなどのコラボレーションが前述したような付加価値につながるからです」。
入口で迎えてくれる庭と「茶」の看板
谷本美花氏「つぼ市のお茶を初めて飲んだとき、お茶ではなく“だし汁みたい”と感じました。それは、甘さ、苦さ、旨みといったおいしさのエッセンスが調和し、口いっぱいに広がったからです。現在、そのときの感動をみなさまにお届けするため、茶寮向けの新商品を開発したり、小学校で授業を行ったりと、さまざまな取り組みに励んでいます。そのひとつが、スーパーマーケットで提案している食材とお茶のマッチングパネルです。例えばワインをたしなむとき、料理によって産地や色を選びますよね。それと同様に、料理に合わせてお茶を選ぶと、楽しみが増え、食事のシーンに付加価値が生まれると思いませんか? このようにお茶を売るのではなく、おいしいお茶のあるライフスタイルを売るのが、お茶屋のミッションです。同時につぼ市という会社自体の魅力も高めていき、“小さい頃からつぼ市で働くのが夢だった”という言葉を面接で聞くのが夢です」。
上:谷本 康一郎氏 下:谷本 美花氏
谷本康一郎氏「これからの目標は、“おいしいお茶は?”“本物のお茶は?”という質問に対して、連想していただけるメーカー一位になることです。そのためには、つぼ市のお茶を味わっていただく茶寮という場所。お客様への啓もう活動。そして何よりも、本物のお茶をセレクトし、淹れていくことを忘れてはなりません。茶寮ではもちろん、スーパーや百貨店など、購入場所がどこであっても高いレベルで“おいしい”と感じていただくことが、お茶のプロとして当然のことですから。また、堺が喫茶文化の発祥地なのはご存知でしょうか。過去にさかのぼると茶聖・千利休が生まれた地であり、江戸時代は僧侶や貴族階級の人しか飲めないお茶を、裕福な商人たちが日常的に飲みながら、おしゃべりに花を咲かせていたと言われています。このように、人と人がお茶を通してつながっていくのが堺のお茶文化であり、これらを後世に伝えていくのは私たちのミッションです」。
お茶菓子までもがつぼ市製
ティータイムがコミュニケーションツールに
取材・文/櫻井 千佳、写真/山下 拓也