おもしろい人、ものが集まって
コラボレーションする。
それがアートの新しいカタチ。
東日本大震災を機に価値観が変わった。
船場センタービル10号館。藍色ののれんと色鮮やかな紙が壁一面に広がるお店がありました。紙のギャラリー 紙音(しおん)。紙のお店であることと、”ね”のかわいい響きを持つ漢字を使いたかった奥様が”音”という文字を使い”紙音(しおん)”と名づけられたそう。時代と共に格式の高いものとされてきた和紙の普段使いを教えてくれる、そんなお店。”老舗の和紙屋さん”で感じるなんだかピンっと貼ったような空気をここでは一切感じないのは、「お店作りはお客様とともに」と考える紙業界出身のご夫婦の愛情があちこちから伝わってくるからかもしれない。ひとつひとつの紙の特徴を観察したり、何色を買うか決めてきたのに迷ってみたり。大切なひとへの贈りものを包んだり、大事な言葉を書いたり。ここで紙を眺めていると、”紙”の無限さを感じる。和紙といっても、産地や手法はさまざま。用途によってその紙の特徴を活かして使い分けることができる。
上:紙製エコポット 下:カラフルな色が揃うパレット和紙はちぎり絵に
最適!美味しい和菓子の下にひいたり、素敵なおもてなしにもつかえそう。
色彩をふんだんに使う日本の代表的な染色法でつくられた友禅紙。奥様も小さな雑貨に貼ったりして楽しんでいる。”もみがみ”は手で揉むことにより独特な風合いがつけられた工芸紙。表情の違うシワを活かし個性的な作品をつくれそう。レースのように薄く透き通った落水紙(らくすいし)は和紙を漉く(すく)際に型などを置き、上からシャワーのように水をかけ模様をつける。繊細な質感と薄さは見ているだけでワクワクしてきます。パステルカラーのエコポットは、水をいれたり植物もそだてられる、立体成形技術による紙ポット。紙なので一般的な鉢よりもリサイクルが簡単。紙の可能性やおもしろさについて話し出したら何時間居てしまうんだろう。
「ぜったいこれ」がみつかりそうな金封コレクション!
紙音を訪れるひとは老若男女さまざま。珍しい紙を1枚から買うことができるお店はなかなかないので、紙音を頼りにしているお客さんも多い。和紙で作品を作っている作家さん、撮影で使うために買いにくるひとや和菓子屋さん。男性のお客さんも多い。ビジネス街に立地しているので、急な冠婚葬祭で金封が必要になるひともよく駆け込んでくる。あまり見たことのない種類のカジュアルなものから、どんなひとに贈るんだろう?と思ってしまうような豪華なものまである。
お客さんひとりひとりの要望を聞いていたら、いつのまにかお店には色とりどりであふれかえっていた。たくさんのひとに紙を触ってほしい。紙の楽しさを伝えていきたい。そんなご夫婦の愛のこもった紙からは、今日もいろんな音が聴こえてきます。
素敵なパターンの友禅紙は紙1枚からでも購入できます。そんな素敵なパターンで作られた箱は何個かまとめて置きたくなります。
上:めずらしい模様の落水紙(らくすいし)も1枚から購入可能。 下:紙の切り落とし品を格安で販売している。この値段でこの量は、なかなかないのでは?
取材・文・写真/荒川 純子