ジュース屋さんは朝が早い
きったり、むいたり、しぼったり
OEM 化粧品メーカーで働いていたとき、見慣れない横文字が羅列されている成分表を見て、「何からできているのか知りたい」と考えたのがすべての始まりでした。調べていくうちにたどり着いたのが、オーガニック化粧品の製造・販売を学ぶためのイギリスの専門学校。日本にいながらにして、e-ラーニング形式でオーガニックビューティを学び、英国NCFE(資格授与期間)認定「ホリスティックビューティーセラピスト」の資格を習得しました。
オーガニック化粧品と言っても、その基準は世界各国で異なるのが現状。つまり、オーガニックと名乗るか否かは、各メーカーの判断がすべてとなってしまいます。そこで私が大切にしたのは、“食べられる素材を使う” ナチュラルスキンケアのレシピを開発し、お客様にレクチャーすること。同時に食べることが好きで、レシピの監修やフードスタイリストも行っていたので、食事を中心とした生活習慣の見直しをはかり、カラダの内側・外側の両方からケアする仕組みを打ち出すことに決めました。
ナチュラルな素材で外側からも内側からもケア
「エディブルスキンケア」を立ち上げてからは人体実験の毎日(笑)。そのせいか肌の調子がすこぶる良くなったことを、身を持って実感しています。スキンケアづくりで大切にしているのは、栄養学や美容学に加え、アーユルヴェーダや漢方の陰陽五行といった自然療法の要素を組み合わせること。そこに日本古来の知恵を織り交ぜ、体の内側・外側からのホリスティックなスキンケアを目指しています。
使用する素材は、薬草やハチミツ、植物性オイル・バターなど。すべてが安心・安全なもので、できる限り国産にこだわるように務めています。現在気に入っているのが、どくだみの芳香蒸留水。どくだみというと、古来より「十薬」と呼ばれるほど重宝されてきた薬草で、デトックス効果など健康面・美容面両方において効用があると言われる素材。このように、日本の薬草にもヨーロッパのハーブに負けないくらいたくさんの使い方があり、美容・健康面においてさまざまな役割を果たしているんです。
大和当帰の葉と花
現在、日本の薬草を海外へ広めるプロジェクトの一員として、新商品の研究・開発に乗り出しています。話の発端は、奈良県の農家さんからの「大和当帰(やまととうき)を世に広めてほしい」というご依頼から。古来から大和当帰の根っこは、冷え性や血行障害の漢方薬として処方されてきましたが、茎と葉の効能はまだ知られていないのが現状。薬の原料以外に使い道がないか。食料品や化粧品として新商品をつくれないかを、農家の方や漢方医の先生、薬務課の方たちと知恵を出し合って、試行錯誤しています。同時に、海外の方たちが日本の薬草について勉強できるシステムづくりも行っています。私たちが中国の漢方やヨーロッパのハーブについて学びたいように、海外には日本の薬草について学びたい方たちがたくさんいらっしゃります。これまでのスキンケアづくりやワークショップの経験を踏襲し、教科書にまとめてe-ラーニング形式で授業を行うのが目標です。もちろん、日本の方たちにも日本の薬草の魅力を知っていただき、ライフスタイルに取り入れていただけたらと願っています。
奈良の農家の方と作った大和当帰のお塩・粉末・お茶
エディブルスキンケアのワークショップ
取材・文/櫻井 千佳、写真/山下 拓也、場所提供/からほり悠