作りたいもので、町を元気に。
これが、ポスター展の醍醐味。

  • 2018.08.01
新世界市場

全国に広がる「商店街ポスター展」。
すべての始まりは、新世界だった。

「商店街ポスター展」とは、商店街各店舗のポスターを電通のスタッフが制作し、それをアーケード中に展示するというもの。大阪の「新世界市場」に始まり、ありがたいことに「文の里商店街」、「伊丹西台」、そして「宮城県女川」…と全国各地に広がっています。
プロジェクトの始まりは、新世界市場をアートやパフォーマンスで彩る「セルフ祭」でした。商店街は賑わい大成功に思えましたが、蓋をあければ翌日からはもの寂しい商店街。さらに売り上げに還元されず、若手と商店主の交流もなされてない…。そんな反省点の中、第2回のセルフ祭で自分なりにできることを考え、「お店のPRポスターを作る」ことを思いついたんです。僕自身コピーライターで、ポスターを制作するのは朝飯前! 当時、会社の若手メンバーの教育係もしていたので、彼らの力を借りながら約20店舗のポスターを作り上げました。もちろん商店街からお金なんかもらえるわけないので、コピーもデザインもすべてボランティア。その代わり「自分たちが好きなものを制作する」「気に入らなくても展示してもらう」「プレゼン&修正はなし」という3つのルールを定めました。

日下慶太作ポスター

こちらはコピーも落書きも日下慶太作

奇をてらえるクリエイションは
クリエイターにとっても産物に。

結果、ポスター展は大成功。「もったいなくて貼れへん」「家宝にするわ」という嬉しいお声をたくさんいただきました。さらに、受け身だった商店主さんが「あんなんしたい」と発言するようになったり、祭り後も「ポスター残しといて」って空き店舗で展示イベントをさせてくれたり…。これは、最高にうれしかったですね(笑)。商店主さんとの距離も一気に縮まりました。もちろんお客様からも好評で、わざわざ立ち止まってポスターを見てくれたり、たくさんの取材も入りました。
その後、ポスター展は「文の里商店街」、「伊丹西台」、被災地の「女川」と広がっていきました。「女川」では、地元・仙台の方が作ったからか表現の重みが違いましたし、大分では右側にポスター、左側に情報を掲載したガイドブック形式、福井では高校生と二人三脚でポスターを作り、新しい可能性を見出しました。
僕たちの仕事はクライアントありきで、自由にクリエイティブを発揮できる仕事は滅多にありませんから。ポスター展は、クリエイターにとっても個性を出せる非常にいい機会になりました。しかも地域を元気にできるなんて、この上ない財産やと思います。

和菓子屋店主インタビューの様子

きっかけとなった新世界市場の商店主たちとの会話は日常に

趣味はUFOを呼ぶバンドと写真。
宇宙でポスター展ができたら最高!

プライベートでは、UFOを呼ぶバンド「エンバーン」のリーダーや、写真家としてツッコみたく風景をくすっとくるコピーと組み合わせた「隙ある風景」を連載しています。エンバーンはね、話すと止まらなくなるんですが(笑)。ボーカルと楽器で形成されていて、演奏を通じてUFOに「ここにいる」っていうサインをおくるんですよ。すると、友好的な宇宙人たちが反応してくれるんです。つい先日も、大野山のキャンプ場で30分くらい演奏していたら、謎の飛行物体が近づいてきました。UFOってね、信じない人には見えないんです。だから、まずは信じることが大事。彼らにはすべてお見通しみたいですね(笑)。
写真も趣味のひとつで、道で寝てる人とか、電話ボックスで携帯で話す人とか、日本語版の「るるぶ九州」を読む黒人とか。こういう思わず見てしまう光景を、7、8年くらい撮りためています。これは、制限のある広告とはまた違ったクリエイターとしての活動。最初は「二兎追うものは一兎も得ず」って言葉もあるように、統一感のないことをやるのはあかんと思ったんですが、表現の幅は広がったし、ゆくゆくは繋がるんやなって。長い目で見たとき「よかった」って思えるようになりました。

大阪検定 ポスター展全集イマジネーションピカスペース

上:ポスター展は大阪検定まで広がった 下:市場内のピカスペースは彼にとって憩いの場

エンバーンのメンバー道で寝ている人

上:金色の宇宙人の格好で指揮者をしている 下:決定的瞬間を撮りためている「隙ある風景」

 
日下 慶太氏

くさか けいた
日下 慶太

  • 株式会社電通マーケティング・クリエーティブセンター コピーライター。写真家、セルフ祭実行委員、UFOを呼ぶバンド「エンバーン」のリーダーとしても活動している。『商店街ポスター展』の仕掛人。
2012年11月
新世界市場ポスター展
2013年08月
文の里商店街ポスター展
2014年11月
伊丹西台ポスター展
2015年02月
女川ポスター展
2016年02月
UFOを呼ぶバンド「エンバーン」結成
2016年09月
福井県大野市・大野ポスター展
2018年06月
初の自著『迷子のコピーライター』出版
WebSite
http://keitata.blogspot.jp/

取材・文/櫻井 千佳、写真/山下 拓也(一部本人提供)



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おもしろい人、ものが集まって
コラボレーションする。
それがアートの新しいカタチ。

東日本大震災を機に価値観が変わった。

ダレソレ
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作りたいもので、町を元気に。
これが、ポスター展の醍醐味。

全国に広がる「商店街ポスター展」。すべての始まりは、新世界だった。

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