おもしろい人、ものが集まって
コラボレーションする。
それがアートの新しいカタチ。
東日本大震災を機に価値観が変わった。
目の前にある大きなキャンバスに、音楽に合わせてイラストを描くおもしろさやダイナミックさ。それを多くの方に伝えたくて、ライブパフォーマンス活動を行っています。きっかけは、大学生のとき。当時、美術部で油絵を描いていたのですが、展示会に出展したとき「アートに興味のない方も含め、もっとたくさんの方に作品を見てほしい」と考えたんです。展示会となるとハードルが高く、来場されるのはその道のプロの方か芸術大学の学生ばかり。それなら、アートの敷居をいい意味で下げたい。オープンなスペースで絵を描いて、歩いている人に振り返ってもらえるように音楽を流したらいいのではないか? そんな思いつきが頭の中でカタチになり、ライブパフォーマンスに至ったんです。最初に披露したのは、大学4年生の文化祭。そのときは、ペンキを使って人の顔を描きました。その後、仕事をしながらにはなりますが、マイペースに12年間続けています。
ライブパフォーマンスの難しさは、一発勝負であること。あとは、シンプルな分、ごまかしがきかない難しさがあります。描くときはキャンバスが大きく、仕上がりまで完成形が分からないので、感覚を大事に描いていきます。曲が終わって、後方に退いたときにようやく完成形が分かる緊張感も、パフォーマーにとってはやりがいかもしれません(笑)。あとは、“描くこと”より“パフォーマンス”を大事にしています。だって、いくら絵が上手でも、淡々と描いていたらおもしろみがないでしょう? 例えば、サビのときは動きをオーバーに、速い曲ならスピーディにというように、曲調に合わせてアクションも変えるようにしています。そのためには、絵と曲が同じタイミングで終えられるように事前練習しておくことが大事。まずは描くモチーフを見つけるために5回、決まってから時間通りに終わらせるために5回というように、イベント前は練習を繰り返しています。
下:障子紙に描いたライブアート
音楽と一緒に完成形が分かると、観客の方たちの盛り上がりが伝わってくるんです。だから、上下真逆の状態でモチーフを描いて、最後にキャンバスを引っくり返すなど、観客の方たちにネタバレしないように工夫しています。そういった意味では、5年前に神戸のモザイクで行ったイベントは、達成感がありました。透明のアクリル版の表に風景画を描き、完成したと同時に色とりどりのペンキを流し込んだんです。そうすると、ペンキがアクリル版上で混じり合い、まるで夕暮れのようなニュアンスが生み出せました。これは、後から気づいたことなのですが、ペンキは乾いていない状態だと滴下する習性があるので、時間が経って絵の具が入り混じり合います。そのサマは、まるで日が暮れていくかのような躍動感、美しさがありました。このような想像し得ないドラマが起こるのもライブパフォーマンスのおもしろさ。これからも今までになりアートシーンが提供できると自負しています。
下:神戸モザイクで行ったライブアート
上下真逆に描き、最後にキャンバスをひっくり返したアート
取材・文/櫻井 千佳、写真/山下 拓也(一部ライブアートプロジェクト提供)