作りたいもので、町を元気に。
これが、ポスター展の醍醐味。
全国に広がる「商店街ポスター展」。すべての始まりは、新世界だった。
幼い頃から親に「植物バカ」と言われるくらい、寝ても覚めても植物のことばかり考えていました。家族で山登りに出かけたとき、緑を追い求めて迷子になったのもよき思い出です(笑)。植物の魅力は、動物みたいに声を出したり目を合わせたりはできなくても、人のアプローチに対してリアクションがあるところ。だからゆっくり付き合って大事にしていくと、ペットみたいな存在になります。
私はそんな魅力に魅せられ、10代後半になると海外から数千種類の種や苗を取り寄せて、育てることをはじめました。当時は趣味の領域で、枯らしてしまった品種もありましたが、「こうなればこうなる」という裏付けがとれたのは現在の糧になっています。あとはガーデニングの本を片っ端から読み漁りました。興味のある分野だったこともあり、吸収は早かったですね。その後、アパレル会社の企画業務など違う仕事も経験しましたが、「大好きな植物と関わりたい」という思いが強まり、株式会社グリーンチームの一員になりました。
植物それぞれに適材適所を。
ガーデンデザイナーの仕事は、お客様からのご要望をうかがい、それに対したプランをご提案すること。私の場合は、まずテーマカラーを決めて、デザインを考えていきます。大切なのは植物と人と景観の調和。個人宅でしたら、純和風のお家なのか、今風のデザインハウスなのか。壁紙、舗装、ドアや門柱の色との相性で、植物の色も、形も、大きさも左右されます。私の場合、数千種類の選択肢を持ち合わせているのですが、その中から選ぶのは難しくもあり、最もやりがいのある瞬間です。
また植物には原産地があり、好む環境が異なります。日当たりのよい南側には日なたを好む植物、北側には日陰を好む植物を選ぶことで、どのシーンも生き生きとした気持ちのよい環境が演出できると考えます。もちろん、施主様がお好みの植物もあるでしょうから、おうかがいして必ず取り入れるようにしています。だって植物に振りまわされて楽しめなくなると、たとえ美しくしても無意味ですから。まずは仲良く楽しんでほしいと考えます。
植物・景観・人の調和にも大切な植物の色。
昨年の冬に、御堂筋の彫刻の両脇にある花壇のデザインを担当しました。主役はあくまでも彫刻なので、彫刻を引き立てるようなデザインにこだわっています。御堂筋は大阪人にとって「赤のライン」。ですので、テーマカラーはレッドです。シクラメンの赤を基調に、そのまわりをパンジーやビオラで彩りました。個人宅のときと公共の場では、コンセプトの立て方が少し異なります。公共の場は、多くの方が見られる空間ですので、やはり見た目のインパクトが大切です。私の場合は、今すぐの美しさと長期的な美しさを両立するため、一年草と多年草を組み合わせて、一年中楽しんでいただけるように工夫しました。
ただの植物好きから始まりましたが、グリーンチームの活動を通して、植物が人に元気をくれる存在だと深く実感しています。植物が身近にあって「美しい」とか「気持ちいい」と感じるのは、やはり木々に囲まれたいって気持ちがあるから。今後もガーデンデザイナーとして、ハッピーを拡散できたらと思います。
元々日本の植物が逆輸入されることで、日本にはない品種に改良されることも。
取材・文/櫻井 千佳、写真/山下 拓也