ジュース屋さんは朝が早い
きったり、むいたり、しぼったり
とある町で「子供に安心して食べさせられるおやつを作りたい」と誕生した、ある夫婦の移動ドーナツ屋さん。二人の思いは、ささやかなやさしさを残しながら今や全国に40を越えるお店に受け継がれている。ポルトガル語で「森」という意味のfloresta(フロレスタ)。「森は多様な動植物が密接に関わりあい、絶妙なバランスの上に成り立つ。そのように人と人がつながっていきますように、それが森と共に広がり成長してきますように」という願いが込められているそう。心斎橋の喧騒を抜けて四ツ橋沿いを歩いていると遭遇する、おおきなわっか。わっかを掲げた真っ白な壁に映えるショーケースには、いつものあの茶色いのや、ついつい写真を撮りたくなる、かわいい動物ドーナツ、季節の旬なものを使ったものなど、おいしそうなドーナツが並んで待っている。ドーナツ大好き店長さんが「5分待っていただければ」と勧めてくれるのは、当店自慢のネイチャードーナツ。むふふ〜な香りに包まれた揚げたてほかほかのまあるいのを出されたら、その場でパクっとしてしまいそうになった。
壁で発見する森の動物たちや植物は周年記念のイベントで描かれたもの。
毎日食べても飽きない、florestaのドーナツ。日替わりドーナツのカレンダーもあり、買ったその日にまた買いに来る日を決めてしまいそうになる。ピンク、黄色、みどり、ショーケースにかわいく並んで待っている動物ドーナツ。これは2010年に行われた「こんなドーナツあったらいいなコンテスト」で5歳の女の子の’おえかき’からできたものだそう。自分が思い描いたドーナツの絵が商品化されるなんてそんなうれしいことはない。コンテストはほぼ毎年開かれ、子供だけじゃなく大人も参加している。florestaとドーナツ好きなひとたちが思いを込めて、「こんなのあったらいいなぁ〜」と描かれた絵には、想像力豊かな作品がいっぱいだ。
上:どうぶつドーナツ!!下:スタッフがひとつひとつ思いを込めてつくる。
ここ堀江、新町界隈は、いわゆるスイーツ激戦区。有名な洋菓子屋さんや昔からある和菓子屋さん、トレンドをおさえたお店もたくさん。そんな中で、堀江に住む若いママや学校帰りの子供たち、仕事帰りサラリーマンまでみんなに愛され続けるドーナツ屋さんfloresta。こだわり抜かれた素材を使い、ドーナツに使われるおめかし用のトッピングやグレーズはできる限り店内で作られる。お客さんの声や、現場にいる作り手、お店同士のコミュニケーションで生まれる味やアイデアをミックスさせ、個々が地域に密着したお店になっている。「だれもが安心して食べられるものを」夫婦の信念とスタッフの思いはやさしいまあるいカタチになって運ばれていく。
上:アイスクリームもこだわり素材でつくられている。
下:なんでも書ける「らくがきノート」と動物ドーナツ誕生をお話にした絵本。
当店自慢のネイチャードーナツ!!5分待って、揚げたてをぜひ。
ドーナツ:ネイチャー130円、シュガー130円、チョコレート160円、塩キャラメル180円
取材・文・写真/荒川純子