おもしろい人、ものが集まって
コラボレーションする。
それがアートの新しいカタチ。
東日本大震災を機に価値観が変わった。
ヒソヒソ話がいまにも聞こえてきそうな、のっぺらぼうなのに表情豊かなキャラクター… Re:VERSE PRODUCTS の登場人物たちは「かわいい」と一言で片付けるのには物足りない、なんともいえない不思議な魅力がある。このフェルトのアップリケやブローチたちは、パズルのように各パーツがはめ込み式で組み立てられており、指でなぞってもその境目がわからなく、まるで元から一枚であったかのような仕上がり。絵の具で塗ったのと同じような平面感を目指し、丁寧な手作業で作られている。
子供や動物をかたどった彼らは、目や口がなく、可愛いモチーフのくせにどこかタダモノならぬ雰囲気。
生みの親であるイラストレーターのトヨクラタケル氏に製作経緯を聞くと、素材であるフェルトが象徴する温かみの裏側にある、「もろさ」という負の面にフォーカスし、「目に見えるものとその内側にあるものは違う」という考えを1つの材料として製作していて、また、「想像の余地」を残すために顔を描かずにおいたそうだ。彼らを見ていろいろ想像してしまった私は、どうやらまんまとその仕掛けにはまったようだ。
コースターやブローチはフェルトを何枚も重ねて圧着。側面も美しい。
「手にとって、いろいろ思考してもらうこと。」これが数グラムのフェルトたちの、隠れた使命。それは決して押し付けがましいものではなく、たとえば今の子供達が彼らに出会った場合、何年か後にこの世界観に興味を持ってくれたらうれしいし、そこで達した考えが作者本人の意図するものでなくてもいい。独自の視点で世界の輪郭を切り取るイラストレーターが表現媒体を「作品」から「商品」に代えたとき、こう考えているのかもしれない―商品はただ消費されるだけではなく、購入者に何かきっかけを与えるものであってほしい―と。少なからずこのような願いがこもった彼らは、あなたの目に何を見せてくれるのだろうか。
上:どこか浮遊感のあるキャラクター
下:手作業から生まれるアイテムたち
つい手に取ってしまう「かわいい」見た目ながらも、手のひらからはみ出す世界。一筋縄ではいかない所が何よりの魅力だと筆者は感じる。
「ひとに感動を与えること」が仕事であり喜びであるトヨクラ氏。お客さんの喜ぶ姿が見たいので、フェアなどにも出店し自ら店番をしている。
最近では神具・仏具を扱うメーカー「ここかしこ」と共同で「ソフト神棚」を開発。フェルトで神棚…かなり驚きの発想だが、こんな風に神様を祭っている場所があれば、きっとみんなが笑顔になれそう。
今後もアップリケや神棚以外の意外なものが登場しそうな予感。その時ほころばすのはフェルトではなく、私たちの顔だろう。
上:立体カードなども
下:トヨクラタケル氏作品「こどもおりば 35」
毎日手を合わせるのが楽しくなりそうなソフト神棚
※オンラインショップにてカード可。実店舗は各店要確認。
取材・文・写真/後藤 真悠子