まあるいカタチの夫婦のおもい
やさしさと信念は全国に受け継がれる
昨今、カスタマイズは定番になりつつある。パーツを組み合わせて、何通りものなかから“あなただけのもの”を作れますという商品をよく見るようになった。けれど、「あともうちょっとこうならば…」と歯がゆい思いをしたことはないだろうか?
空堀商店街にある紙匠雑貨エモジでは、そんなかゆいところに手が届くようなオリジナルノートを作れる。表紙と中紙を選んで、穴を開けて、リングで綴じ、留め具をつける。表紙は紙や皮、布、植物を加工したものまであり、中紙も色んな材質・色、デザインも定番の罫線から絵日記まで多岐にわたる。そして嬉しいのは、各パーツとも初めはリング用の穴が開いていない状態なので、用途に合わせて綴じる方向を選べるということ。また、穴を開けずにノートとは違う用途で各パーツ個別に使うことも出来るのだ。
例えば、しっかりした固さの表紙は色紙代わりに使ったり、中紙は手紙をしたためるために用いたりと、まるで「使い方はご自由に」と書いてあるようだ。(もちろんそんなこと書いてるわけはないが。)
第一印象が何事も大事。表紙選びはついつい時間がかかる。
定番のB6サイズノートの他にも素材を選んでパチンと挟むだけのノートバイキングや、8cm四方の紙を選んで穴を開け綴じる8X8メモノートはイベントや提携店でふらっと気軽に作れるので、実は彼らも人気モノ。
紙と穴あけ機はセットで貸し出しを行っていて、個人利用も可。これがあれば、友達を呼んで手作りノートの会を開催したり、操作が簡単なので子供と一緒に遊びながら作ったり出来る。こんなホームパーティ、ついつい自慢しちゃいそう。
紙業界出身の店主が、大好きな紙にもっと触れてもらおうと始めたこのお店。「紙は生き物」と断言する店主のお話を聞けば、もっともっと紙について知りたくなる。そうそう、小窓からはノート作り風景を覗くことも出来るので、童心に帰ってガラスにはり付き見学をしてもいいかもしれない。
上:植物の自然な文様を生かしたオリジナル素材のノート。右端がErba。
下:ずらっと並んだ素材たち。実は完成品もあります。優柔不断な人に朗報?
また、オリジナル表紙にも力を入れていて、例えばErba(エルバ)という木の皮のような優しい手触りの表紙は、なんとフィリピンの大洪水の原因になったヒヤシンス。未曾有の大災害をもたらした災いのもとが、今度は人間の大事なアイディアを守るために生まれ変わったとは、なんだかロマンチックだ。
そんな好奇心の高まるこのお店は、いろんなアイディア大歓迎。持ち込みでも穴を開けられる状態のものなら何でも綴じてくれるので、これはと驚かれるものを綴じにいってみてはどうだろう?
くらしの今昔館にジオラマがあるほど歴史の古い四軒長屋。その一角に、使い古した紙のように溶け込んでいる紙の店が綴じてきた想いは、一体何万通りなのだろうか。
使い勝手がいいのに個性が光る中紙たちをどう活躍させるかはあなた次第。
赤ちゃんの成長記録ノートを自分用に使う大人もいるとか。
上:この機械で穴あけ・綴じをする。覗き窓からもちょうど見える位置。
下:紙のお香などユニークな紙雑貨も揃っている。
B6サイズオリジナルノート約1000円〜、持ち込み料金(穴あけ・綴じ賃)300円〜
取材・文・写真/後藤 真悠子