まあるいカタチの夫婦のおもい
やさしさと信念は全国に受け継がれる
大阪、本町にはさまざまな種類のお店や人が発見できる。あたたかなうつわや繊細なグラスが窓越しから見える大阪のうつわ屋「Meetdish」。「meet」=出逢う、「dish」=うつわ、店主が作ったこの造語には、ここへ訪れてくれたひととうつわとの出会いへの想いが込められている。この地でうつわ屋さんを始めたのは、もともとご両親がウツワを販売するお店を手伝ったことがきっかけ。『工芸いそべ』がある大阪狭山市だけでなく、もっとたくさんのひとに若手作家の器を広めたいという願いから、大阪市内での出店を決めたそう。そして今では全国の作家さんの作品がならび、ここに展示された作家さんからその知り合いの作家さんへの新しいつながりから生まれた作品もみることができる。おいしいごはんにはそれに合ったうつわが必要、そして素敵なうつわにはおいしいごはんが必要不可欠。そんなふたつが一緒になった風景を想像しながら、1つずつ、そろえてみたい。
窓越しに、おだやかな光が入って、器がいっそう引き立つ。
日本で多く作られているのは”陶器”、欧米諸国の多くでは”磁器”が作られ、2つの大きな違いは原材料と焼き方。陶器は粘土、磁器は陶石と呼ばれる石と、粘土を混ぜ合わせたものを原料とし、焼く温度や方法にも違いがある。子供のころから、自分専用のお茶碗やお箸があり、成長と共に買い換えていく日本の食器文化。人数分すべて同じお皿が並ぶのが主流の欧米諸国とはちがい、料理によって、または地域によって、大きさ、柄、土の種類もたくさんある。全国様々な土地の作品がならぶMeetdish。毎週展示会などのイベントが行われ、つぎつぎと新しいものが入荷されてくる。陶器に限らず、磁器、ガラス、木工や鍛金など約60名もの作品があるのになぜか統一された印象を受けるのは、きっと他の誰でもない店主のこだわりからくるものだろう。
上:広々とした店内には、全国からの作品が並ぶ。
下:今日は赤ワインにお肉!って料理したくなるグラスとプレート。
市内に展開した店主の思いは、今は世界に向いている。日本の伝統、文化、うつわの魅力を海外にも発信していきたいと願い、今後は海外への出店も考えているそうだ。今やオンラインで土が買える時代。”どこかの有名な焼き物”を買うだけではなく、手ごろな値段でも買うことができ、工房や陶芸教室で自ら作ることもできる。多くのファッション雑誌がうつわの特集を組み、雑貨屋さんやインテリアショップには当たり前のように陶器がならんでいる。昔から続く焼き物市にはたくさんの若い人が訪れ、ここ数年で新しく開催される市などもあり、”うつわ”に触れられる機会はどんどん増えた。そんな影響を受け、Meetdishを訪れるひとも年々変化しているという。どんなひとにも気軽に見にきてほしい、気軽に使ってもらいたい、作家さんたちの思い、お店のひとたちの思いは次はどこへ発信していくのか楽しみだ。
上:ぜひ3つ並べておきたい一輪挿し。
下:どれで飲んでもおいしそうな酒器。
見とれてしまい、どれにするか、決められない。
取材・文・写真/荒川 純子