作りたいもので、町を元気に。
これが、ポスター展の醍醐味。
全国に広がる「商店街ポスター展」。すべての始まりは、新世界だった。
目の前にあるモノたちがどうやって作られているのか…気になってはいても、なかなか知ることができないその背景に注目し、現場=工場(こうば)・職人たちとトコトン向き合った新しいものづくりのかたちがある。
made in west という関西の企業とクリエイターで成り立つこのブランド。まずは企業や工場に足を運び、徹底的にナマの現場を見て・聞いて学び、既存の生産ラインを最大限に生かした製品をデザインする。クリエイターはあくまで下支えであり、売り場でもメディアでもパートナーとなった企業の名前を前面に出すことに終始している。
ただし、クリエイターの仕事はそのままをデザインするのではなく+αの新しい価値を付け加えること。たとえば、家族経営の刺繍屋さんと今年100周年を迎える天王寺動物園を掛け合わせたワッペンは、可愛いけど甘口すぎないリアルさが絶妙。「新しい大阪土産を」という企画から生まれたものだ。
ついまじまじと見てしまう、天王寺動物園のワッペン
関西のものづくりの現場は「じゃあこうしたらどうやろ?」という技術のプロならではの臨機応変なアイディアで溢れ、とにかく元気だ。
しかし、それを“どう売るか” となると長年受注専門だったために悩む企業も多い。泉州のタオル工場もその1つで、made in west との出会いがその2.5 重織りという最新の特殊技術の使い道を広げるきっかけになった。
今回のインタビューでmade in west 担当ディレクターさんが「素地がいいから」という言葉をよく使うのが特徴的だった。いいモノをどう伝えるか、ストーリー作りのプロはさまざまな角度から素材の輪郭を切り出す。
上:2.5 重織の泉州タオル 下:本当に買えるパンのパントート
まだ知られていない関西もんの底力を、語り部となり全国各地のフェアで紹介しているmade in west。その伝え方は多岐に渡る。
たとえば、パントートは関西の各地域で頑張る「そこでしか買えない」パン屋さんのパンを大阪の捺染会社がプリント。関西と離れた地域でこのトートを手に入れた人が、実際にその店まで足を運んでくれたら素敵だなぁと、商品を通して地域と地域が繋がればという願いがこもっている。
関西のクリエイターと企業が紡ぐ欲張らず温かなものづくりの形は共感を呼び、日本全国にゆっくり浸透していってる。
上:人気のソックスは「オーガニックコットンなのにカラフル」な逆転の発想
下:工場ひとつひとつの個性からmade in west は生まれる
made in west の商品たちには prideli graphic lab でいつでも出会える
取材・文・写真/後藤 真悠子(サムネイル写真,Fig.1,6 はmade in west 提供)