ジュース屋さんは朝が早い
きったり、むいたり、しぼったり
あっつい夏はもちろん、寒い冬にも、ダンディな伊達男でも、仕事中でも…ジェラート大国イタリアはいまでこそ有名な話だけど、そんなジェラート文化を伝えたい一心で30年も前に大阪で開かれたお店があります。いわば日本におけるジェラート店の先駆け的存在。
店に入るなり「ブオンジョールノ!!」の元気な一声。常連さんは食べ終わっても店主と世間話をし、カップジェラートを家族用に大量に買い込むお母さんがいたり、「720万円ね」とどえらい額を請求されたり…イタリアののんびりした空気と、大阪のノリがうまいことミックスされたこの店は、肩肘張らない本場イタリアのまちのジェラート屋さんそのままの雰囲気。マエストラ(職人さん)が溶けそうなくらいのアツい思いを込めて作るジェラートは、乳脂肪分が5%と低めなのにコクがあり、かつ後味さっぱり。素材の味を壊さないよう低温でゆっくり殺菌し、保存の際も冷やし過ぎないように繊細に出来ているから、市販のものとは一味も二味も違うのです。
アドリア海の黒真珠~黒オリーブのジェラート~
今年5月に日本中のジェラート職人が競う祭典で準優勝した「アドリア海の黒真珠~黒オリーブのジェラート」は、イタリアでもまだ珍しいシロップ漬けオリーブを使用。そこにオレンジピールの爽やかさとピスタチオの香ばしさ、ハーブリキュールのアクセントがクリームチーズベースに上手く溶け込み、味が何重にも折り重なったここでしか食べれない取り合わせ。
“月の愛” という意味の「アモーレ・デッラ・ルーナ」はイタリアの国際コンテストで覆面投票の末、見事4位に入賞しました。ビターチョコに酒かすを混ぜた、深いコクと芳醇な香りの伊和融合の味は、本場の舌も唸らせました。
気軽に入れる雰囲気ながら、味はどれも本気の味。ひっきりなしにお客さんが入るのも納得です。
上:味のある店内と、至ってシンプルな盛り付けは本場のジェラテリアを彷彿させる
下:手前はアモーレ・デッラ・ルーナ
ジェラート職人というのは一見華やかだけど、大半が力仕事で、新製品を開発する際は生みの苦しみもあり、実はなかなか大変だそう。それでも終始楽しそうに話してくださるマエストラからは溢れんばかりのジェラート愛を感じます。また、海外で“ジェラート馬鹿” な職人達が集まる祭典に参加した際、ジェラートを中心軸に人種関係なく人の輪が広がることを実感し、自身もジェラートを通して人と人、食を繋げ、もっともっとジェラート文化を浸透させたいと改めて思ったそう。
「だって、日本だってアイスが嫌いな人のほうが珍しいでしょ?」彼女の夢はまだまだ続きます。
美味しくて、人情味あふれるこの場所にまたブオンジョールノを交わしに行こう。
外から覗けるように作業スペースに合わせて窓を取り付けた。
小窓を通して工房とレジの息の合う連携プレーが繰り広げられる
取材・文・写真/後藤 真悠子